“I love you”を日本語で言えますか?
「ミュージカル」と聞いてイメージするのは、どんなことですか?
『サウンド・オブ・ミュージック』のように誰でも歌える有名な歌や、『マイ・フェア・レディ』の映画の名シーンでしょうか。
あるいは、日本の劇団も上演しておなじみの『キャッツ』、『レ・ミゼラブル』などの舞台かも知れませんね。
しかし「見つめ合っていたかと思ったら、突然に歌い出したり踊り始め、観客をとまどわせるヘンなモノ」という理由で、ミュージカルを敬遠する人も少なくないようです。
確かに、合図もなしに歌と伴奏が突然始まるあの異様さ加減は、不慣れな人には受け入れがたいものであっても仕方がありません。
さらに良くないのが、英語の原曲を日本語訳で歌われたときの居住まいの悪さや、ある種の「小恥ずかしさ」が、日本人の英語に対するコンプレックスをかきたてるところです。
これが日本で(特に日本語で)ミュージカルが浸透しにくい大きな原因の一つになっているという指摘も、なるほど頷けてしまいます。
アメリカで生まれ育ったミュージカル
ミュージカルは、20世紀初頭の黒人音楽がルーツのジャズや、諸外国から流入する移民の文化をベースに発展を遂げた、生粋のアメリカ文化です。
バーレスクやミンストレル、ボードヴィルといった大衆演芸の全盛時代を経て、1907年に上演されたフランスのレヴューのスタイルを踏襲した『ジーグフェルド・フォリーズ』は、アメリカ人好みのゴージャスなきらびやかさで大成功を収めました。
そこにヨーロッパの優れた音楽家が渡米したことと、映画産業の隆盛が相まって、ミュージカル作品は歌とダンスの融合による楽しさと華やかさ、ハッピーエンドが大好きなアメリカらしい明るさを特色とする文化として確立し、世界に広まっていったのです。
第二次大戦中から1950年代までは、MGMをはじめとするハリウッドの豪華絢爛なミュージカル映画の黄金期とされ、日本でもファンを増やしました。
その後、ベトナム戦争を経た60年代には、ロックやヒッピー文化の影響を受けて『ヘアー』など新しいスタイルのミュージカルが登場。
さらに70年代以降、『コーラスライン』や『シカゴ』、『キャッツ』、『オペラ座の怪人』等々、現在でも人気の高いミュージカル作品が次々と生まれています。
息をするように英語で歌い踊ろう!
100年を超える歴史を紡ぐアメリカのミュージカルは、ブロードウェイを拠点に現在も数々の作品を発表し続けていますが、そこは批評家に酷評されたら一夜限りで打ち切りになることも当たり前、という厳しい世界でもあります。
それでもブロードウェイの舞台を夢見るダンサーの卵たちの努力や葛藤は、様々な映画やドラマに描かれている通りであり、徹底した実力主義と過酷な競争、辣腕プロデューサーの暗躍などは、それだけでも非常にドラマチックで刺激に満ちています。
近年、日本でもオンエアされたアメリカのヒットドラマ『glee(グリー)』(左写真は、http://video.foxjapan.com/tv/glee/s1/downloads/より引用)は、現在のアメリカ文化が一望できる、ミュージカルの入門編的なシリーズです。
キャストのメンバーの歌唱力の高さにも驚きますが、洒脱なショーマンシップは、アメリカ文化を土台に育った彼らだからこそ身についた表現力と言えるでしょう。
英語圏の人が話すとき、言葉と同時にジェスチャーが混じるように、ミュージカルのスタイルは英語と共に身振り手振りも歌とダンスに取り込みながら発展したものです。
つまり、ミュージカル=アメリカ文化そのものであるため、日本人が振りだけを真似てもサマにならないのは致し方ない、と言っては酷でしょうか。
また、ウィットに富んだ洒落やジョークが満載の本場のミュージカルは、ネイティブ英語が身についていないと理解しにくいものですが、そこは陽気なアメリカ人、とにかくみんなが楽しめることがミュージカルの良いところです。
理屈は抜きに、たまにはミュージカルを観てアメリカ文化のシャワーを浴びてはいかが?
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